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入船亭扇辰一門会 [落語]

入船亭扇辰一門会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『垂乳根』
入舟辰乃助『前座ラウンジ』
入船亭小辰『鋳掛屋』
入船亭扇辰『鰍沢』

彼女を寮まで送り、そのまま車で中野まで。
安い駐車場を知っているのでそこに停めて会場まで向かったら思ったより距離があって焦る。バイクだと2〜3分なんだけどね。

辰ぢろさん、「以前赤い毛氈の高座に赤い手拭いを持ってきて困ったのに、……またやってしまいました」と苦笑い。そして「まだ師匠が到着しておりません」とのこと。
噺はまだ慣れていないのか、語尾をちょいちょい噛んだり言い間違いが多いのが気になる。聴いている方からすると、語尾がハッキリしないと「おい大丈夫か」と不安になってしまうことがわかった。

辰乃助さん、なんか見かけがシュッとした感じになったような気が……。
初高座の日に師匠をしくじった思い出をマクラに。
一門は「扇辰日和」で初高座を踏むのがしきたりで、その日師匠宅から会場までタクシーで移動したのだが、師匠がイヤホンして目をつぶって噺をさらっていたために自分も初高座のネタをさらっていたのだそうだ。そのためにタクシーが会場とは別のところに向かっていることに気づかず、師匠が激怒したとか。「しかも俺がさらってる隣でセコな『寿限無』やりやがって! お前なんか破門だ!」となったらしい。
結局はなんとかなったのだが、その後も師匠との思い出を続けていたら「いい加減にしろこの野郎!」と私服姿の扇辰師が登場する。シャツと合わせた赤いマスクがオシャレ。会場は拍手で沸く。「これだけ言っておく。……おめえなんか破門だ!」。生で破門宣言聞いちゃった。辰乃助さんは座布団外して土下座する。
「……師匠もう来てたんですね」と苦笑い。
数年後のパラレルワールドの噺、と前置きがあって噺に入る。
真打に昇進して5年ほど経った辰乃助さんが主人公で、師匠から「お前寄席に全然顔付されてないじゃないか。小辰はもう弟子が3人もいて、辰ぢろはさがみはら若手落語家選手権も獲ってるんだぞ」とお小言を喰らう場面から始まる。
「あー情けねえなあ、寄席に出てえなあ。そうすれば前座が『師匠師匠』と言ってきてくれるから、上から目線で小言が言えるのに!」とゲスい欲望を滾らせているところに落語家専用の前座がホスト/ホステスのラウンジがあって……というもの。着物のたたみ方や羽織の着せ方について細かく小言を言い、「気持ちいい~~~~!」となる。どんどん沼にはまり込んだところで小辰さんが助けに来、「これに乗って逃げろ!」と示されたのがドラゴン(辰)に姿を変えた扇辰師で……と一気にファンタジーに。
いやコレすっごい面白い。多分「二ツ目から見たセコい真打の前座に対する態度」についての痛烈な皮肉も込められているし、「前座に小言を言ってみたい」というのももしかしたらちょっぴり思っているのかもしれない。でもまあ寄席じゃできないだろうなあ。以前にも巣ごもり寄席で掛けていたらしいが、今日のために作ったのだろうか。数回やるだけのために作ったのならもったいない。けど周りの状況なんかも影響する噺だし、賞味期限は短いか。

仲入りを挟んで小辰さん。
「……いやあまさか師匠がドラゴンだったとは……。ていうか師匠を『これ』呼ばわりって。結局あいつが一番失礼なんじゃねえか」と至極まっとうなご意見を述べる。さすが一番弟子。
辰乃助さんに触発されたのか、小辰さんも初高座の日に師匠をしくじった話をマクラに。
その日のトリネタ『阿武松』が終わったところで追い出しのCDを流して緞帳を下げるのが小辰さんの仕事だったのだが、追い出しは鳴ったが緞帳が下りなかったのだとか。緞帳の主電源が切れていたのが原因だったそうで、当時はテンパっていたので気づかずにずっとボタンを何度も押していたという。異変に気づいた扇辰師が袖を睨むが緞帳は下りず、最後はゴロンと横に転がったそうだ。小辰さんの実演つき。でもそれもおそらく扇辰師の優しさだよねえ。この後「おめえはクビだ」と言われたそうだが。
最近はさすがにしくじることも少なくなったそうで、もししくじっても息子さんを連れて行くと喜ばれるのだそうだ。おかみさんに息子情報を話すだけでも喜ばれるらしい。いい関係ですね。もう完全に親子じゃん。
子どもの話から悪童たちの噺に入る。
やっぱり何度聴いても上手いなあと思う。特に後半は鰻屋ひとりが話しているのだが、息もつかせずにずっと話し続け、それでも周りの情景がありありと目の前に浮かぶ。

トリの扇辰師、マクラもたっぷりと。
現在末廣亭の夜席主任なのだが、「全然入んねえの。昨日なんか50人くらいだよ」とのこと。まあねえ。新宿ってのもあるしなあ……。「今末廣亭は新宿で一番安全な場所です」。
今年は仕事がかなり減ったが、特に旅の仕事がほとんどなくなってしまったと嘆く。「ここと……あそこと……」と数えられるほどしかなかったそうだ。
最近嬉しかったニュースとしては、関越道が立ち往生したときに岩塚製菓のトラックが商品の煎餅を配ったというもので、「あれは私の地元の長岡の会社なんですよ。……まあ私が威張ることじゃないんですが」と話すも「銀座に『瑞花』っていう高級ブランド品を出していて、これが美味いんだ。高級って言ったって煎餅ですからそんなに高いものじゃない。私はいつも贈り物なんかに使ってるんだ」とのこと。今度見てみよう。
雪国新潟の話が出たところで以前新潟の落語会があったときにほくほく線が雪で止まってしまって立ち往生したエピソードを挟んで『鰍沢』に。
これもまた何度聴いてもお見事。雪山の冷たさや暗さが目に見えるよう。実際に夜の冬山に行ったことなんてないのだけれど。
噺の最後に切り立った崖の上に出たときの情景などは静謐さに息を呑む。

たっぷりとお弟子さんたちも含めて堪能させていただきました。
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