高円寺・ノラや寄席 300回記念 夜席 [落語]
高円寺・ノラや寄席 300回記念 夜席
於：高円寺 座・高円寺2
入船亭辰のこ『たらちね』
三遊亭天どん『呼ぶ男』
入船亭扇辰『阿武松』
柳家喜多八『うどんや』
三遊亭兼好『締め込み』
柳家紫文 三味線漫談
春風亭一之輔『薮入り』
なんだこの夢のような顔付け。
誰ひとりハズレのない、というかこの中の誰かひとりでもいればその人を目当てに会へ行くという噺家ばかり。
今日一日で私が追っかけてる噺家の大半を聴くことができた。
昼席も喬太郎、白鳥、文左衛門、菊之丞、小せん、寒空はだか各師という魅力的な顔付けで、こちらもまた隙のないラインナップ。こちらも行きたかったのだけれど、いかんせん予算が……。
天どん師、出てきて早速愚痴を吐く。
「なんで僕はいつもこういう出番なんですかね。兼好とか一之輔とか後輩なんですよ、腹が立つ」って、あー兼好師も後輩だったんだっけ。
「今日は誇らしいんだか腹が立つんだかわからないことがありまして。浅草の昼席で代バネでトリをとったんですよ。……あ、拍手しなくていいですよ、誰の代演だと思います？」あれ俺昨日浅草の番組調べたんだよな、確か……「木久蔵兄さん」あー。「代演て似たような人に頼むじゃないですか。馬鹿の人の息子の代わりですからね」うん、なんでだろ。根岸のあの人空いてなかったのか。
「こう見えてなかなかの芸人なんですよ……なんで自分でハードル上げたんだかわかんないですけどね」いつもやってますよね。
噺は何年か前に一度だけ聴いたことがある。第一声が「あー緊張するなー……デリヘル。……うーんお客さんが引いてるぞぉー半分くらいに嫌われたかなぁー。でもやめませんよぉー」とブツクサいいながらもまあ結局いつものようにマイペースを崩さない。まー天どんワールド炸裂といった感じ。
扇辰師は久しぶり。昨日振られちゃったしなー。気づいたら四ヶ月ぶり。
いろいろなことを思いつくままに話しているという感じのマクラ。「なんでこんなことを話してるかといいますとね。どうでもいいけど天どん短ぇよ」だそうだ。
とここに乱入魔の天どん師が前を開けた肌襦袢と股引という出で立ちで袖から登場。やっぱりきたな。
「サーセン」といった感じで頭をちょっと下げたところで扇辰師がシッシッと追い払う。天どん師が下がったところで「まあいいんですけどね……詫び様ってものがあるだろう！」と大喝一声。もう一度天どん師が現れて深々と一礼する。
マクラの中に相撲の話題が出ていたので、じゃあ相撲の噺をという感じで『阿武松』に。
朴訥とした長吉がいい。
喜多八師、前座さんの肩につかまりながら登場。脚の具合が悪いとは聴いていたが。
しかし喜多八師も久しぶりだけど、また痩せたなあ。
薬の影響で食欲もないそうで、「そんなときにあんな大食いの噺されると嫌がらせかと思う」そうだ。
登場の様子から「大丈夫かなあ？」と思ったが、噺に入ってしまえばこれまでどおり大きな声も出せそうだ。
酔っぱらいの酔いっぷりがいかにも本物っぽい。
兼好師、「昼席も含めてよくこれだけのメンバーを集めましたよねぇ……こんな悪そうなの」「私くらいですよ、もしこのままサラリーマンやれっていわれてできそうなのは」などといっていると、袖から太鼓がドドン。兼好師が手をついて袖に向かって頭を下げる。太鼓のツッコミは誰だろう、やりそうなのは扇辰師かな？
「夜席のメンバーは『悪そう』っていっても刑事っぽいですよね。喜多八師匠は出世を諦めたベテラン刑事で、扇辰師匠は取り調べ上手そうですよねぇ。一之輔君はもう絶対マル暴ですよ。……天どん兄さんだけが犯人かな」上手い。
「こういう節目の回にはおめでたく泥棒の噺をする」といわれたときに、「泥棒噺だったら『締め込み』がいいな」と思っていたらそのとおりだったので嬉しい。
亭主が勘違いでおかみさんを追いだそうとするときに、「出てけよぅ」と凄みながら泣きそうになって言葉をつまらせたり、「俺が本気で怒る前に、俺が泣いちゃう前に出てけよぅ」と強がるのがおかしい。
また、酒を勧められた泥棒が「駆けつけ三杯!? ……いや駆けつけたわけじゃねぇんですけど……むしろ忍び足で……。忍び足できたのに帰りは千鳥足っておかしいでしょ」などなど、細部にもいろいろとくすぐりが仕込まれていて、ホント上手いなあと思う。
紫文師、席亭によればノラや寄席は紫文師がやれといったから始めたのだそうだ。
紫文師は「そんなこといったかな。聞かれたから『やればいいじゃない』と答えたくらいなはずだけど」とおぼえがない様子。
ネタはいつもの長谷川平蔵シリーズ。
「特別」と言いながら大岡越前に変わるのもいつもどおり。
だが、長谷川平蔵と大岡越前で連続して「干物屋」。オチが違うのかなと思ったらそのまんま。
紫文師が「あれ私なんか間違えました？ みんな反応悪いなあ！」といっていたが、そりゃー同じものを聞かされたらそうなりますって。
その次は「葬儀屋が大岡越前の脇を通り抜ける……私今何屋っていいました？」と仕込みを忘れる。あー何屋か忘れちゃうってこれこないだ高座でいってたなー。
お疲れなのだろうか。まあ珍しい状況が見られたということで。
一之輔師、ほとんどマクラも振らずに噺に入る。
一之輔師の『薮入り』は久しぶり。もしかしたら二ツ目時代以来かも。
あまり派手な改変はなく、ほぼストーリー通り。人情噺寄りの演目はあまりいじらないようにしているのだろうか。
無理に笑いをとらなくても聴かせられるという矜持なのかもしれない。違うかもしれないけど。
おめでたい節目の回、ということもあるかもしれないが、全体的になんというか家族愛やら夫婦愛やら師弟愛やら、なんとなく愛にあふれた演目が多く並んだ印象。
いやー好きな人ばかり出たとあって、今回の記事長っ。
於：高円寺 座・高円寺2
入船亭辰のこ『たらちね』
三遊亭天どん『呼ぶ男』
入船亭扇辰『阿武松』
柳家喜多八『うどんや』
三遊亭兼好『締め込み』
柳家紫文 三味線漫談
春風亭一之輔『薮入り』
なんだこの夢のような顔付け。
誰ひとりハズレのない、というかこの中の誰かひとりでもいればその人を目当てに会へ行くという噺家ばかり。
今日一日で私が追っかけてる噺家の大半を聴くことができた。
昼席も喬太郎、白鳥、文左衛門、菊之丞、小せん、寒空はだか各師という魅力的な顔付けで、こちらもまた隙のないラインナップ。こちらも行きたかったのだけれど、いかんせん予算が……。
天どん師、出てきて早速愚痴を吐く。
「なんで僕はいつもこういう出番なんですかね。兼好とか一之輔とか後輩なんですよ、腹が立つ」って、あー兼好師も後輩だったんだっけ。
「今日は誇らしいんだか腹が立つんだかわからないことがありまして。浅草の昼席で代バネでトリをとったんですよ。……あ、拍手しなくていいですよ、誰の代演だと思います？」あれ俺昨日浅草の番組調べたんだよな、確か……「木久蔵兄さん」あー。「代演て似たような人に頼むじゃないですか。馬鹿の人の息子の代わりですからね」うん、なんでだろ。根岸のあの人空いてなかったのか。
「こう見えてなかなかの芸人なんですよ……なんで自分でハードル上げたんだかわかんないですけどね」いつもやってますよね。
噺は何年か前に一度だけ聴いたことがある。第一声が「あー緊張するなー……デリヘル。……うーんお客さんが引いてるぞぉー半分くらいに嫌われたかなぁー。でもやめませんよぉー」とブツクサいいながらもまあ結局いつものようにマイペースを崩さない。まー天どんワールド炸裂といった感じ。
扇辰師は久しぶり。昨日振られちゃったしなー。気づいたら四ヶ月ぶり。
いろいろなことを思いつくままに話しているという感じのマクラ。「なんでこんなことを話してるかといいますとね。どうでもいいけど天どん短ぇよ」だそうだ。
とここに乱入魔の天どん師が前を開けた肌襦袢と股引という出で立ちで袖から登場。やっぱりきたな。
「サーセン」といった感じで頭をちょっと下げたところで扇辰師がシッシッと追い払う。天どん師が下がったところで「まあいいんですけどね……詫び様ってものがあるだろう！」と大喝一声。もう一度天どん師が現れて深々と一礼する。
マクラの中に相撲の話題が出ていたので、じゃあ相撲の噺をという感じで『阿武松』に。
朴訥とした長吉がいい。
喜多八師、前座さんの肩につかまりながら登場。脚の具合が悪いとは聴いていたが。
しかし喜多八師も久しぶりだけど、また痩せたなあ。
薬の影響で食欲もないそうで、「そんなときにあんな大食いの噺されると嫌がらせかと思う」そうだ。
登場の様子から「大丈夫かなあ？」と思ったが、噺に入ってしまえばこれまでどおり大きな声も出せそうだ。
酔っぱらいの酔いっぷりがいかにも本物っぽい。
兼好師、「昼席も含めてよくこれだけのメンバーを集めましたよねぇ……こんな悪そうなの」「私くらいですよ、もしこのままサラリーマンやれっていわれてできそうなのは」などといっていると、袖から太鼓がドドン。兼好師が手をついて袖に向かって頭を下げる。太鼓のツッコミは誰だろう、やりそうなのは扇辰師かな？
「夜席のメンバーは『悪そう』っていっても刑事っぽいですよね。喜多八師匠は出世を諦めたベテラン刑事で、扇辰師匠は取り調べ上手そうですよねぇ。一之輔君はもう絶対マル暴ですよ。……天どん兄さんだけが犯人かな」上手い。
「こういう節目の回にはおめでたく泥棒の噺をする」といわれたときに、「泥棒噺だったら『締め込み』がいいな」と思っていたらそのとおりだったので嬉しい。
亭主が勘違いでおかみさんを追いだそうとするときに、「出てけよぅ」と凄みながら泣きそうになって言葉をつまらせたり、「俺が本気で怒る前に、俺が泣いちゃう前に出てけよぅ」と強がるのがおかしい。
また、酒を勧められた泥棒が「駆けつけ三杯!? ……いや駆けつけたわけじゃねぇんですけど……むしろ忍び足で……。忍び足できたのに帰りは千鳥足っておかしいでしょ」などなど、細部にもいろいろとくすぐりが仕込まれていて、ホント上手いなあと思う。
紫文師、席亭によればノラや寄席は紫文師がやれといったから始めたのだそうだ。
紫文師は「そんなこといったかな。聞かれたから『やればいいじゃない』と答えたくらいなはずだけど」とおぼえがない様子。
ネタはいつもの長谷川平蔵シリーズ。
「特別」と言いながら大岡越前に変わるのもいつもどおり。
だが、長谷川平蔵と大岡越前で連続して「干物屋」。オチが違うのかなと思ったらそのまんま。
紫文師が「あれ私なんか間違えました？ みんな反応悪いなあ！」といっていたが、そりゃー同じものを聞かされたらそうなりますって。
その次は「葬儀屋が大岡越前の脇を通り抜ける……私今何屋っていいました？」と仕込みを忘れる。あー何屋か忘れちゃうってこれこないだ高座でいってたなー。
お疲れなのだろうか。まあ珍しい状況が見られたということで。
一之輔師、ほとんどマクラも振らずに噺に入る。
一之輔師の『薮入り』は久しぶり。もしかしたら二ツ目時代以来かも。
あまり派手な改変はなく、ほぼストーリー通り。人情噺寄りの演目はあまりいじらないようにしているのだろうか。
無理に笑いをとらなくても聴かせられるという矜持なのかもしれない。違うかもしれないけど。
おめでたい節目の回、ということもあるかもしれないが、全体的になんというか家族愛やら夫婦愛やら師弟愛やら、なんとなく愛にあふれた演目が多く並んだ印象。
いやー好きな人ばかり出たとあって、今回の記事長っ。
こんにちは。
私も昨日同じ会場に居ました。
昼に行くか夜にするか、相当迷いました。
喬太郎師と一之輔師を迷い、
はだか師と紫文師を迷い、
結果夜にしました。
喜多八師、謝楽祭の時はファンの人と談笑してて
体調は良さそうだったので昨日は驚きました。
心配だなー、と考えながら見ていたら
期待していた紫文師がミスってテンションがやや下がり。
終演後の出口にご本人がいらして、お知り合いの方との
会話で、「風邪で体調が悪い」とおっしゃってました。
一之輔師。
当初は、喜多八師がトリだと思ってましたので
急遽なのか、事前から決まってたのか判りませんが
私にとって半年振りの一之輔師には風格が漂ってました。
ただその前で少々テンション下がり気味だったのと
薮入りは結構聞いていたので、最後は大爆笑するような
話も聞きたかったかな、と思いました。
最後にまた愚痴ってすいません。
席は見やすかったんですが、後ろの列のじいさん。
一人だけ異常な大声で笑い、前の席を頻繁に蹴るんです。
いい歳して落ち着きなくマナー悪くてみっともなかったです。
通ぶってるくせに、うどん屋の下げの辺りで、物音を立てたりと
とても落語通とは思えない態度で
席運ないなー、自分と思いました。
by あべし (2015-11-23 16:07)
>あべしさん
こんにちは。いつもありがとうございます。
喜多八師は私も驚きました。
謝楽祭でお見かけはしたんですが、歩くのが辛そうだったので話しかけたりサインをねだることもできず。
席運……といえば、昨日は私の通路を挟んだ隣のおっさんが周りに響き渡るデカい鼾をかきながらぐっすり熟睡してました。
前半部全部寝てましたね。
このメンツで寝るか!？ 高い金払ってなにしに来てるんでしょうね。
その後ろのオバハンたちはずーっと話してるし。
あんたらが聴かないのは勝手だけど、周りを巻き込まないでほしいものです。
by Macky (2015-11-23 16:34)
お返事有難う御座います。
やはり離れた席だと、周囲の雑音が聞こえたり聞こえなかったり
するんですね。私の席までは、そのイビキは聞こえませんでした。
私も通い始めは眠くなった事がありましたが、
最近ではメガシャキとコーヒーを飲んで予防してます。
去年初めて国立へ行った際、方向音痴で30分も道に
迷いながら走り続け開演後、
不覚にも寝てしまった苦い経験があります。
それ以来、国立が嫌いになり、一之輔師の真一文字も
２回くらいしか行ってません。交通費も地下鉄は高く付きますし。
話は戻りまして。
ちなみに私に迷惑を掛けたじいさん。
低音の響きで大きな声が井筒監督っぽいのですが
たぶん以前にも他の会で近くの席になり、
こいつのそばだけは勘弁と
思ってた人と同一人物かもしれなかったです。
変なタイミングで大声で笑うので、私が過去に見ていた会の噺家さん
ご本人が、遠まわしでソフトな口調で
「今面白い事は何も言ってないのに、何で笑うの？」
と高座中に、そのじいさんの方をチラッと見て注意していました。
やりにくかったんだと思います。
たぶん、そのじいさん本人には全く気づいてないと思いますが、
噺家さんの言葉を直訳するなら、
「変なタイミングで笑うな」
と言いたかった事でしょう。
by あべし (2015-11-24 01:08)
>あべしさん
こんばんは。
以前ある師匠に聞いたことがあるのですが、お客さんは自分がまるで意図しないところで笑うことがあるのだそうです。
そうすると「なんか変なことしちゃったかな」と気になってしまい、プロでもパニックになるのだとか。
でも笑いのツボはひとそれぞれですからねー……。
何気ない仕草とか言葉尻がなぜかやたらおかしいってこともありますし。
私も自分しか笑ってないってことたまにあるので、あまり強くは言えないのですが。
ただ、たまに「ここで笑っちゃうハイセンスな俺」アピールしてるのか？ ってくらい不自然な笑い方してる人がいて、そういうのはちょっと勘弁してほしいです。
あと手をバッチンバッチン叩いて笑うとか。あれは一体なにアピールなんだろう。
by Macky (2015-11-24 17:51)